2015年 11月 14日
住民訴訟の債権放棄に制限 |
総務省は、違法に公金を支出した首長や自治体職員に賠償を求める住民訴訟に関して、賠償責任を免除する地方議会の議決を制限する制度見直し案を公表した。
係争中に議会が賠償免除を決めることに伴い、裁判所が支出の違法性を判断しないケースが目立つためだ。行政に対する監視機能を目的とした住民訴訟の、実質的な「骨抜き」といわざるを得まい。
請求が多額となる訴訟も多く、個人の支払い能力を考慮した現実的な対応が求められる場合もあるとはいえ、司法での真相究明に支障が出てはなるまい。住民訴訟制度の趣旨が損なわれないよう、責任の所在の明確化は最優先されるべきだ。
住民訴訟では自治体が賠償請求権を持つため、議会が権利を放棄する条例を議決すれば、首長らの賠償を免除することができる。だが、ここ10年ほどで裁判中の条例制定が増え、弊害が指摘されている。
議会の判断を「追認」した裁判所が訴訟の前提が崩れたとして、公金支出の違法性の有無をはっきりさせないまま、住民が敗訴するケースが相次いでいるからだ。
議会側は「個人では払えない」などとするものの、与党が多数を占める議会が多いという。外形的に執行部と議会の「なれ合い」とみえなくはない。政治状況によって真相の究明がゆがめられかねないなら、早急に見直す必要がある。
賠償免除の制限には議会の裁量を狭めるとの批判もあるようだ。しかし、執行部へのチェック機能を果たすべき議会の判断で違法性の追及が曖昧になっては本末転倒だろう。
違法とされた場合に過失責任を厳しく問うと、首長や職員の萎縮を招くという指摘もある。だが、公金を扱う以上、法律にのっとった支出が求められるのは当然だ。自治体の厳しい財政状況で公金の重みも増すなか、責任と無縁というわけにはいかない。
総務省の見直し案は、係争中の議決は禁止する一方で、判決確定後は監査委員の意見を踏まえ、議会が免除することを認めている。支払い能力を超える賠償や職員らの懸念にも対応できるだろう。
住民の厳しい視線は、行政の緊張感にもつながる。より充実を図り、適正な公金支出を徹底したい。
(高知新聞より)
係争中に議会が賠償免除を決めることに伴い、裁判所が支出の違法性を判断しないケースが目立つためだ。行政に対する監視機能を目的とした住民訴訟の、実質的な「骨抜き」といわざるを得まい。
請求が多額となる訴訟も多く、個人の支払い能力を考慮した現実的な対応が求められる場合もあるとはいえ、司法での真相究明に支障が出てはなるまい。住民訴訟制度の趣旨が損なわれないよう、責任の所在の明確化は最優先されるべきだ。
住民訴訟では自治体が賠償請求権を持つため、議会が権利を放棄する条例を議決すれば、首長らの賠償を免除することができる。だが、ここ10年ほどで裁判中の条例制定が増え、弊害が指摘されている。
議会の判断を「追認」した裁判所が訴訟の前提が崩れたとして、公金支出の違法性の有無をはっきりさせないまま、住民が敗訴するケースが相次いでいるからだ。
議会側は「個人では払えない」などとするものの、与党が多数を占める議会が多いという。外形的に執行部と議会の「なれ合い」とみえなくはない。政治状況によって真相の究明がゆがめられかねないなら、早急に見直す必要がある。
賠償免除の制限には議会の裁量を狭めるとの批判もあるようだ。しかし、執行部へのチェック機能を果たすべき議会の判断で違法性の追及が曖昧になっては本末転倒だろう。
違法とされた場合に過失責任を厳しく問うと、首長や職員の萎縮を招くという指摘もある。だが、公金を扱う以上、法律にのっとった支出が求められるのは当然だ。自治体の厳しい財政状況で公金の重みも増すなか、責任と無縁というわけにはいかない。
総務省の見直し案は、係争中の議決は禁止する一方で、判決確定後は監査委員の意見を踏まえ、議会が免除することを認めている。支払い能力を超える賠償や職員らの懸念にも対応できるだろう。
住民の厳しい視線は、行政の緊張感にもつながる。より充実を図り、適正な公金支出を徹底したい。
(高知新聞より)
by onbuz
| 2015-11-14 21:05
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